2022/02/04 11:02

厳しい冬もそろそろ終わりかと思いきや、また寒くなってきたこの頃。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、石についてならこじつけてでも様々なことを書きなぐるこのブログ。

今回は【ポットホール】を紹介しようと思います。


ポットに穴があいたらテーブルは大惨事ですが、
これは石にあくもので【甌穴(おうけつ)】とも呼ばれます。


↓↓ たとえばこれ!! ↓↓



(出雲市神西町の岩坪 天然記念物に指定されている)

出雲市の代表的な甌穴で、地元では『岩坪』と呼ばれています。

真ん中の一番大きい穴は直径約2.5m
見ただけではわかりませんが、深さはなんと約1.4mもあります。

もちろん、人工的に開けたのではありません。
自然の力だけでこれほど大きな穴が生まれたのです。


甌穴があくメカニズムは、こう。





川底や岩の割れ目や小さな窪みに小石が入り込んだ際に
水流で回転し、長い年月をかけて岩を削っていくことで、滑らかな円形の穴が生まれます。

この辺りは軟質の岩盤らしいですが、それにしても見事な大きさです。


(道路から見下ろす岩坪)

周辺の木の枝には、モリアオガエルが卵(泡状)を産み付けます。
生まれたオタマジャクシは自動的に岩坪に落ちるので、それまで卵を狙う敵に襲われないという仕組みになっているんですね。
かしこいなぁ。


撮影時は露出していましたが、台風の時期や雨期になると川が増水してすっぽり隠れます。
地元では年2回岩坪の清掃が行われていて、
かの『出雲風土記』には、穴の砂を掘り出すことで干ばつの際も雨に恵まれると記載されているそうです。

また、滑らかな水の流れを見て、大国主命が「滑し磐石なるかも」と仰せられたことから
この辺りは『滑狭郷』という地名になったともあります。


(すぐ横に建立されている岩坪明神)

地学、そして歴史的にも重要な場所として大事にされているのですね。



出雲より南の奥出雲町では、大規模な甌穴が見られます。

それがこちら、県立自然公園『鬼の舌震(したぶるい)』。


(仁多郡奥出雲町 流れているのは大馬木川)

黒雲母花崗岩地帯の2kmを超えるV字峡谷。
その道々は奇岩・巨石のオンパレードで石好きにはたまらないスポット。

その中には多数の甌穴が見られます。


(真ん中の水が溜まっている部分も巨大な甌穴)

その中でも代表的なのがこちらの『人面磐』。


(人面磐)

ちょっとわかりづらいですが、人の顔の形に甌穴があいています。

他にも鬼の舌震には巨大な吊り橋や、真っ二つに割れたような『鬼の試刀岩』。
近くにはそば処もあり、家族で楽しめる観光名所となっていますよ。


さて、お次は松江市にある甌穴です。

どこだかわかりますか?



そう、真ん中の二つの穴です!


メガネのようにぽっかり空いたこの甌穴は、加賀の潜戸のすぐ横にあります。
(地上から行くのは一苦労ですが……)



近づくとなんとも美しい曲線です。
透き通った海水に満たされ、時折魚が泳いでいます。

このように海の波によってできた甌穴は【海蝕甌穴】と呼ばれているそうです。

また、一緒に【タフォニ】も見ることができます。


(左側の穴が巨大なタフォニ)

【タフォニ】は石ではなく乾燥や海水飛沫によってできる風化穴。
ここでは巨大な棚状になっています。


入って空を見上げたりして……不思議と落ち着く空間でした。



美しい凝灰岩の層も必見です。
この辺りは、大山隠岐国立公園の一部に指定されていますよ。


それにしても自然の造形美には驚かされるばかりです。


(石にあいた謎の穴 水に穿たれたのか風化したのか)

何事も小さなことからコツコツと、ですね。
私も小石に負けじと地道に頑張ってまいります。


では、また。